学校におけるICT環境の整備状況を文部科学省のデータ(令和元年8月)から読み取れることをまとめてみたい。
(平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)(平成31年3月現在))[速報値]
対象:全国の公立学校(小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)
1 教育用のコンピュータ1台あたりの児童生徒数
5.4台(平成31年3月現在)
これは10年前の7.2台より増加している。
しかし、児童生徒数が大きく減少している事を考えると、数字ほど増加しているとは言えない。
一人一台と言いたいところだが、その道のりは遠そうだ。
2 インターネット接続率
93.4%(平成31年3月現在)(30Mbps以上)
各学校の接続率は100%へ近づきつつある。
100Mbps以上の高速のインターネットとなると69.1%と平成27年度の30.5%からは整備が進んでいると言えるが、 YouTubeなど動画を利用しようとすると課題が残る。
3 普通教室の無線LAN整備率
40.7%(平成31年3月現在)
普通教室の校内LAN整備率が89.6%であるのに対し、普通教室の無線LAN整備率は40.7%と整備が遅れている。
普通教室でタブレットを利用する事を考えると、無線LANが必要になってくる。
校内LAN整備率から無線LAN整備率を引いた48.9%という数字は、普通教室にパソコンが1台もしくは数台あり、それらを有線LANで繋いでいると考えられる。
この場合、パソコンの更新状態によってはほとんど用いられていない状況も考えられ、数字上は整備が進んでいる様に見えるが、現実は活用されていない可能性がある。
4 普通教室の大型提示装置整備率
51.2%(平成31年3月現在)
大型提示装置とはプロジェクタ、デジタルテレビ、電子黒板のことをいう。
この大型提示装置の整備率は平成31年現在51.2%と約半数が整備されている。
これは無線LANの整備率が40.7%である事を考えると、無線LANを整備している学校は大型提示装置も整備しているのではないかと考えられる。
つまり、無線LANの整備を進める状況に変えることができると、普通教室のICT環境はかなり整ってくると考えられる。
5 教員の公務用コンピュータ整備率
120.6%(平成31年3月現在)
教員の公務用コンピュータの整備率は平成24年から100%を超えており、整備が進んできていると考えられる。
このことは学校の公務運営にパソコンが必要不可欠なものになっていることを示している。
機器の整備と同時に、パソコンを扱うスキルも重要となっている。
6 統合型公務支援システム整備率
57.2%(平成31年3月現在)
統合型公務支援システムとは教務系、保健系、学籍系、学校事務系を統合した機能を有しているシステムのことをいう。
平成27年3月の40.1%から緩やかに整備が進んでいる。
しかし、教員の公務用コンピュータ整備率の120%を考えると非常に低い。
この数字は、統合型公務支援システムが整備されていない40%強の自治体において、各学校がそれぞれにおいて係りを配置し、それぞれの部署においてシステムを構築し、メンテナンスを行なっていることを示す。
学校の予算の多くを人件費が占めることを考えると、非常に効率の悪い。
教育予算の少ない日本において非常に大きな課題である。
また、統合型支援システム整備率を都道府県別にみてみると、鳥取県が100%であるのに対し、福島県は9.9%と格差が大きい。
長崎県は平成30年度が数%であったが、平成31年度は約25%まで整備を進めている。
今後、各都道府県は整備を進め、近い将来全ての都道府県において100%に近い数字になるものと予想される。
まとめ
各自治体により、ICT環境の整備は確実に進められているが、国が求める情報機器を用いた授業を進める環境としては、まだまだ不十分だ。
普通教室への無線LANが整備される状況になれば、大型提示装置の整備も進みICTを用いた授業を行う環境が整うと考える。
教員の働き方改革が話題になっている昨今、統合型公務支援システムの整備を早急に進める必要があると考える。
教育にお金をかけようとする環境を作りたい。